【自分メモ】

フリーランス翻訳者の読書メモ

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マシになるって書いてあったよ (長文)。  


和文英訳の仕事を続けていると、ある時重大な事実に気付きます。

それは、どんな有名な企業に勤めていても、どんなにエライ役職の人でも、その人達が正しい日本語を使えるかというと、それはまた全然別のハナシ、ということです。
日本語の文は、主語やら目的語やら述語やらで成り立っています。文が複雑になるとその他にも色んなパーツが混ざってきますが、基本的には主語は1つ、述語は1つ、述語に対する目的語は1つ、といった感じですよね。でもね、実際に私のところにやってくる原稿はね、違うんですよ~。例えばそれが、誰でも知っている有名企業の、とある部署の主任さんが書いたプレゼン資料だったとしても、主語ナシ、述語1つ、目的語2つ(以上)なんて文がごろんごろんしていることはよーくあります。

基本の文が、「私はイチゴを食べます。」だとしたら、この主任さんの文は、「イチゴをパンを食べます。」てな感じかな?

主語は前後の文意から理解できればいいんですが、前後の文も全部こんな感じだったりすると、もうアウトです。仕方ないので、「こうなんじゃないかなあ?」と推測しながら訳出して、最後に「こうやって解釈しましたよー」とコメントを残します。逆に、悩んでも悩んでもどうしても分からなければ、分かりませんと潔く謝ります。というように、実際に翻訳するのも私達の仕事ですが、こうして「この人、何が言いたいんだろー??」と悩むのも仕事の大きな一部分です。

・・・などと、ずいぶんと偉そうに書いちゃっていますが、原稿を執筆する方々は時間に追われていることが多いと思うので、たぶん頭に思い浮かんだことをだだーっと書いて、推敲せずに、そのまま翻訳にまわしているのだと思うんです。私も独立前は企業で働いていましたから、それが仕方のないことであるのは十分承知です。しかも、日本語って難しいですもんね。こうして自分の言葉を綴るのだって十分難しいですし、英語を自然な日本語にする作業も、やっぱり大変。だから、執筆者さん達も、苦労して日本語を綴っているのだろうと容易に想像できます。

でもですね、もうずいぶん前になりますが、こんな原稿があったんです。その原稿もやはり有名企業の偉い人がお書きになったものだったんですが、文を読んでいるとフト、括弧に入った内部用メモに目が止まりました。

「英文はマシになる。」

え!?
どういうこと!? Σ(・ω・;ll)ナニッ!?

と思ってそのメモが指す和文を読んでみると・・・支離滅裂でした(「イチゴをパンを食べる」より数倍ひどかったです・笑)。どんな文だったかというと、「こんな感じの事が言いたいけどうまく言えないから、投げちゃえー」的な文でした。ということは、「英語に翻訳されれば、その文はちゃんと意味の通る文になっちゃうんだ」と信じてる(祈ってる?)ということですね。うーん、困りました。

英語はとても「細かい」言語です。日本語では「文脈で理解」しがちな主語も必ず各文に入っているし、車のガソリンだって私が「あと1目盛りしかないよー」というと夫Cは必ず「それはタンクの何分の1?」とか聞いてくるし、技術書に「電流:数十mA~数A」などとあっても日本語ではOKなところ、英語では「で、それは具体的に何mAから何Aなの?」と問いただされてしまいます。また、文と文とのつながりに関しても、接続詞とか因果関係がすごく大事で、意味的にしっかり筋道立ってないと「良い文章」と判断してもらえないんですよね。そんなわけで英語って、良く言えば「ディテールにこだわる」言語なんです。

だからあの文も、執筆者さんは、「英語になれば、細部までキッチリと筋の通った文に自動的に生まれ変わるはず!」と思われたのでしょうね。でも実際そうかというと、そうではありません(残念っ)。私は普段お客様に、「原文の品質は訳文の品質に比例しちゃうんです」と申し上げています。つまり、カップラーメンを渡されても、私の力ではそれをAFURIのゆず塩麺に変えることはできないのです(当たり前・笑)。私ができる事といえば、その文を穴の開くほど見つめ、前後の文章を何回も読んで、「この人はこういう事を言おうとしているんだろうなァ~」と推測して、上述の手順を踏む事だけです。その推測が幸運にも執筆者さんの意図に合致していれば「めでたしめでたし」ですし、そうでない場合は私が作った訳文を再度執筆者さん側で調整してもらう必要があります(二度手間で申し訳ないけれど、仕方ないかな)。

仕事をしているといろんな原稿に出会いますが、「マシになる」って書かれちゃったのは初めてでビックリ(笑)。 この部分は内部用メモなので訳出する必要はなかったように思うのですが、「翻訳不要」という指示もなかったので、中途半端な文を翻訳者に丸投げしたペナルティ(!?)として、メモ部分も英語にしちゃいました(←メモ部分にも料金発生、です。ン十円ですケド・笑)。それにしてもホント、原稿もイロイロ、執筆者さんもイロイロ、ですね(^^)。
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カテゴリ: 【5】 翻訳・語学 

テーマ: 翻訳いろいろ - ジャンル: 就職・お仕事

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Posted on 2008/02/08 Fri. 16:13    TB: --    CM: --

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