【自分メモ】

フリーランス翻訳者の読書メモ

08« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.»10

『壊れた脳も学習する』 

20130909(1).gif


山田 規畝子 著の『壊れた脳も学習する』を読みました。
半年ほど前に紹介した『壊れた脳 生存する知』の姉妹編です(紹介記事はこちら)。

『壊れた脳 生存する知』は、著者の脳内出血についての説明や、その後発生した高次脳機能障害の特徴、そして障害者としての著者自身の経験について書かれた本でした。今回の『壊れた脳も学習する』では、彼女が自身の脳機能とどのようにつきあい日々暮らしているのかが紹介されています。

著者の日々の暮らしは、やはりいわゆる「普通に機能する脳」を持った私には想像できない世界にありました。著者の言葉を借りるなら著者の脳は、「今も昔とおなじようにできることと、今ではできなくなってしまったこととが、混在している状態」で、タイトルにある「脳が学習する」とは、その「ばらばらになったところを繋いでいく」作業なのだそうです。

この本では、高次脳機能障害者にとって世界がどんな風に見えるかがとても詳しく書いてあります。もちろん同じ「高次脳機能障害」であっても、障害の範囲や程度や特徴は一人一人異なるのだとは思います。それでも読み進めるうちに、「高次脳機能障害ってだいたいこういう感じなのかな」という感覚はつかめると思います。

また、著者の視点から見た日本の社会がどれだけバリアフリーからほど遠い所にあるのか、ということも学ぶことができる一冊です。私たちの生活の中にある何気ない物が、高次脳機能障害者にとってどれだけ扱いが難しかったり、危険だったりするのかということも分かります。

ただ、著者自身も書いているように、世の中すべてを高次脳機能障害者のために設計するのは無理なお話しです。それはなぜかというと、高次脳機能障害者が「これは取り除いてほしい」と思う機能や仕組みが、実はある種類の障害を持った人を手助けするために作られた物だったりする可能性があるから(その逆も探せばあるのかもしれませんね)。

そうはいっても、私たちにできることはゼロではありません。例えば自転車で道をふさがないこと、例えば階段の手すりは空けておくこと、例えばすれ違いざまにぶつかったりしないこと。そんな普段のちょっとした気遣いが、高次脳機能障害者にとっての危険を(たとえほんの少しでも)取り除くお手伝いになるかもしれません。

「こういう障害だとこういう問題があって大変だな」と世の中すべての障害について想像したり考えたり、はたまたその考えに基づいて行動するというのは、おそらく不可能に近い行為だと思います。でも、ちょっとだけでも当事者の世界を知っておくことで、何かの時にそれを思い出して手助けすることができたり、危険を排除したりすることができるかもしれないですよね。そういった意味で、このような本は非常に価値の高い教科書ではないかと考えています。

それ繋がりでちょっと話がそれますが、現代ビジネスの「息子と僕のアスペルガー物語」も当事者の世界を紹介してくれる連載です。毎週土曜日の更新で、連載が始まってからもうすぐ1年というところかしら。 当事者の目線から書かれたこの連載では、こういう状況になるとこんな風に考える、こんな風に行動してしまう... ということが非常に分かりやすく書かれています。逆に言うと、この連載に書かれていたような状況をもし自分の周囲で経験した場合は、状況を悪化させないために何ができるのか、何をしてはいけないのか、ということが分かってくるということになるんじゃないかと考えています。

話を戻しますが『壊れた脳も学習する』では、この記事に書いたことだけではなく、もちろんタイトル通り、脳の学習能力の可能性についても学べます。前回の記事でも同じことを書いちゃいましたが、世の中に広めたい情報がたくさん詰まった、出会って良かったと思える一冊でした。
関連記事

カテゴリ: 【4】 心理学 

テーマ: 心理学いろいろ - ジャンル: 心と身体

[edit]

Posted on 2013/09/09 Mon. 01:10    TB: --    CM: --

Greetings!

Categories

Recent entries

Archive

Now on Instagram

Twitter

My bookshelf

Recommended books for you

Search in this blog

Send mail