【自分メモ】

フリーランス翻訳者の読書メモ

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ちょっぴり優しい嘘、に思いをはせる 

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先日たまたま読んだ朝日新聞アピタルの『認知症の方々がともにいきいきと暮らすヒント』という記事に、認知症患者さんが帰宅したがった時のエピソードが紹介されていました。
施設に入居している認知症患者さんが帰宅願望を持つのは、夕方が多いのだそうです。そんな時、記事で紹介されていた施設では、ヘルパーさんが帰宅用の荷物をまとめるのを手伝います。手伝っていると時間が経って夕食の時間になるので、そこで「夕飯でも食べていかれませんか?」と入居者さんに提案して、夕食。認知症患者さんはそうしているうちに自分が帰宅したいと思った事を忘れてしまいます。夕食後部屋に戻ると、そこには荷物が。それを「ご家族からの荷物ですよ」と言って開けば、もちろんそこには入居者さんの物が入っていますよね。入居者さんの気持ちを大切にしつつ事をまあるく収める、とてもいい方法だなあ、と感心しました。

この記事を読んで、イギリスのThe Telegraphサイトの『Wayward Alzheimer's patients foiled by fake bus stop』という記事で紹介されていたドイツの例を思い出しました。アルツハイマー病を患った施設入居者さんの帰宅願望対策として、施設敷地内に偽物のバス停を設置した、という内容です。実際にバスが来ることはもちろんないものの、バス停自体は本物です。入居者さんは昔のことは覚えているので、このバス停でバスを待っていれば家に帰れる、と思うわけですよね。で、バスを待っていると施設の職員がやってきて「バスが来るまで中でお茶しましょう」と提案します。お茶をしながら5分もすれば自分がバスを待っていたことを忘れてしまうので、これで一件落着です... という流れでした。

入居者さんが勝手に施設の外に出てしまうのは危険だし、そうかと言ってひとりひとりの後をついていくのも難しい... という状況にうまく対応できる手法として、その後ドイツ国内の複数施設で採用されたそうです。この記事は2008年のものなのですが、2009年にはイギリスのDaily Mailサイトに、この手法がイギリスでも採用され始めたという記事が掲載されていました(『Alzheimer's sufferers encouraged to wait at fake bus-stop to give 'sense of purpose'』)。

帰宅願望があったことすらすぐに忘れてしまうとはいっても、願望を持つことは事実ですよね。どちらの例も、その願望を頭ごなしに否定したりせず、入居者さんの心を穏やかに保ったまま、安全に施設内にとどめておけるのですよね。私にはなかなか思いつくことのできない優しい嘘だなと、とても感心してしまいました。

私はもともと嘘が好きじゃなくて(好きな人もあんまりいないような気がするけど)、つくのもつかれるのも良い気分ではないのですが、周りを傷つけることなく誰かを守れるようなこんな嘘なら、上手につける人間になりたいな... と、ふと思ったのでした。
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カテゴリ: 【3】 認知症 

テーマ: 認知症いろいろ - ジャンル: 心と身体

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Posted on 2013/02/12 Tue. 01:24    TB: --    CM: --

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