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フリーランス翻訳者の読書メモ

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『アルツハイマー病は「脳の糖尿病」』 


鬼頭昭三&新郷明子著の『アルツハイマー病は「脳の糖尿病」』を読みました。

糖尿病とアルツハイマー型認知症との関係から、新しい視点で根本的治療戦略を提案します。


生活習慣病とアルツハイマー型認知症(以下「アルツハイマー病」)との関係は広く知られていて、私も、「まあ要するに、体に悪いことをすれば脳にも悪そうよね」くらいの認識でいました。それはあながち間違いではなかったようですが、私の心の中のもう一つの認識「生活習慣病がアルツハイマー病の原因」はちょっと違ったようです。

著者らによれば、アルツハイマー病も糖尿病も、根本的原因は同じで、インスリン抵抗性。本書では、ラット実験の知見に基づき「アルツハイマー病は脳の糖尿病である」という議論が展開されます(ちなみにインスリン抵抗性というのは「インスリンは十分な量が分泌されているけれども、効果を発揮できない状態(糖尿病情報センター)」を指し、本書で言及される糖尿病は2型糖尿病を意味します。)著書内で紹介されている実験の一つを超ざっくりまとめると、ラットの脳だけを糖尿病状態にした時とその脳にインスリンを注入した時の認知機能と海馬の解剖病理学所見とを比較すると、インスリン注入後の脳はそれぞれが正常値(またはそれ以上)に回復する、のだそうです。

それならば。

「糖尿病薬をアルツハイマー病にも使えないだろうか」と著者らは提案します。アルツハイマー病と糖尿病それぞれの特徴と現在採用されている糖尿病薬の作用を詳述した上で、アルツハイマー病治療に適しているだろう糖尿病薬の種類を検討します。現在広く使用されている認知症薬は、神経細胞による情報伝達が障害されていることに着目し開発されていて、残念ながらその効果は根本的な改善が望めるものではなく、病気の進行を若干遅らすことができる程度です。著者らの治療戦略はそれとは異なる視点から提案されるものであり、もしここに症状改善の可能性があるのであれば、将来の治療方法の一つとして期待してみたいな、と思っている自分がいます。

本書ではまた、「アルツハイマー病は脳の糖尿病である」という考えに基づき、糖尿病の予防がアルツハイマー病の予防につながるとして、どのような予防策が考えられるかを検討します。主に食事や運動に関する情報が紹介されていますので、もし脳やら神経細胞やら実験に関してはあまり興味がないな~、という場合は、この章にだけ目を通してみるというのもアリかなと思います。

認知症薬として大きなシェアを持つアリセプト(ドネペジル)が承認されて、20年が経ちました。以来、認知症の根本治療を目指して多くの研究者や起業が認知症を研究し、治験も行われてきましたが、残念ながらいまだに「これ!」という薬の開発には至っていないそうです。でもいつの日か、「認知症になったから、この薬を」と処方してもらえるような将来が来るといいなと思っています。

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カテゴリ: 【3】 認知症 

テーマ: 認知症いろいろ - ジャンル: 心と身体

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Posted on 2018/06/04 Mon. 16:55    TB: --    CM: --

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