【自分メモ】

フリーランス翻訳者の読書メモ

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『自閉症の僕が跳びはねる理由』 

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東田 直樹 著の『自閉症の僕が跳びはねる理由』を読みました。

「自閉症」をこれまでずっと、「自分の中に閉じこもってしまう病気」と思っていました。でも、この本を読み始めてすぐ、それが間違いだったことに気付きました。「自閉症」は「自分という体の中に閉じ込められてしまう病気」だったのですね。自閉症を理解するうえで、私、大前提が間違っていました。恥ずかしい・・・、でも、間違いに気付くことができて本当によかったと思っています。

自閉症は生後3年までに発症する障害です。だから著者の東田氏にとっては、「自閉症であること」が「普通」の状態で、他人に「普通じゃない」と指摘されてようやく自分が周りと違うということに気付いたのだそうです。この本は、自閉症を持つ人に向けられた質問とその答えで構成されていて、質問については東田氏がこれまでに多く聞かれたものが選ばれているのだろうと想像しました(つまりそれが、一般の読者が知りたいこと、ということですよね)。そしてその質問の多くは「どうしてあなたはみんなと同じように『普通』にできないの?」という、「普通」にいろいろなことができてしまう人々が無邪気に聞いてしまいそうな残酷な(と個人的に感じる)質問でした。例えば「どうして何度言っても分からないのですか?」とか、「すぐどこかに行ってしまうのはなぜですか?」とか、「どうして言われてもすぐにやらないのですか?」とか。そして、それらの問い対する答えの多くに共通するのは、「好きでそうしているわけじゃない」でした。本当は周りの人たちのように「普通」にしたいし「そうなるべきだ」と思っていても、自閉症を持つ人にとっては、障害が原因でうまくいかないという現実があります。東田氏はそれをとてもよく理解していて、本の中で繰り返し説明しています。ただ、口頭では周りにうまく自分のことを伝えられないために、いろんな言動を「好きでそうしている」と誤解される日々を送っているのでしょう。周りが「こうだろう」と思う東田氏と、東田氏自身の「実はこうなんだ」の間に存在する果てしないギャップが全編を通じて伝わってきます。

この本から学べるのは、自閉症を持つ人のそうした気持ちだけではありません。自閉症が当事者の日常に具体的にどう作用しているのかも分かります。例えば「突然出てしまう大きな声」は、何かを言いたいから出るのではなくて、その時に見た物や過去の思い出に対する反射が引き金になっていて、自分で止めるのは難しいとか、「声をかけられても無視したようになってしまう」のは、かけられた言葉が自分に向けられていると理解できないからだとか。そのほかにもこの本には、心理学の教科書にも自閉症をテーマにしたオンライン講座にも出てこない、いわゆる「普通の人」には想像もできないであろう興味深い解説が盛りだくさんで、自閉症と暮らす日々を少しでも理解したいと思う方には強くおすすめしたい一冊です。個人的には「優れた参考書」と呼びたいです。また、この本は海外でも『The Reason I Jump – One Boy's Voice from the Silence of Autism』として翻訳版が出ているので、この本を通じて世界の多くの地域で自閉症に対する理解がより深まるのではないかと期待しています。

今ふと気づいたのですが、今日は4月2日。世界自閉症啓発デーですね。多くの人がこの障害について理解し、みんなが暮らしやすい社会がつくられていくことを願いたいと思います。


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カテゴリ: 【4】 心理学 

テーマ: 心理学いろいろ - ジャンル: 心と身体

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Posted on 2017/04/02 Sun. 23:33    TB: --    CM: --

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