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『モラル・ハラスメント―人を傷つけずにはいられない』 




マリー=フランス イルゴイエンヌ 著の『モラル・ハラスメント―人を傷つけずにはいられない』を読みました。

モラル・ハラスメントは、暴力です。

十数年前に本書が世に出て以来、「モラル・ハラスメント」という言葉そしてそれに関する知識は、日本の社会にも浸透してきたように思います。「モラル・ハラスメント」を思わせるエピソードを耳にしては、「ねえ、それモラハラじゃない?」とコメントするような場面も目にすることも多くなりました。

では、そもそも「モラル・ハラスメント」とは何なのでしょう。どのような場面でどのように行われ、その「加害者」や「被害者」にはどのような特徴があるのでしょうか。巧妙で残虐極まりない「モラル・ハラスメント」から身を守るにはどうしたらよいのでしょう。

本書では、家庭と職場を主なモラル・ハラスメントの舞台とし、それぞれでどのようなモラル・ハラスメントが展開するのかを事例を用いて説明しています。いずれの場合も、標的とされやすいのは「素直で人の言うことを信じやすく、良心的で罪悪感を持ちやすい」人。何かあると「私のせいかな」と思いがちな人が加害者にとっては理想的なターゲットです。加害者はどのような人物かというと、著者の言葉を借りれば、「自己愛的な変質者」。自己愛的な性格が変質的な段階にまで高まっていて、自分の精神を守るために他人の精神を破壊し、そうすることでしか生きていくことができない人です。職場に例えると、権力欲が強く、他人を貶めると自分が偉くなったように感じる人たちです。さらに、「子供のころに精神的に傷つけられた経験を持っている」とも書かれています。

モラル・ハラスメントは、「加害者が被害者面して標的を惹きつけ支配する」ところからスタートします。被害者にたわいない非難の言葉を曖昧な表現で繰り返し浴びせ、被害者を不安にし、罪悪感を持たせます。被害者が加害者の言動や機嫌に振り回されるようになったら支配完了です。例えば被害者が妻の場合、「夫と別れたい」と思っても、「君みたいなダメな人間を好きになってくれる人間なんて僕しかいない」と切り返され(で、被害者は「そうかな、そうかも・・・」と思ってしまう)、非難に耐え切れず感情的に「もう別れる!!」と言ったところで「そんなヒステリーを起こすなんて心の病気じゃない?」とよけい神経を逆なでするような反応が戻ってきたり。被害者が他人に自分の苦しみを訴えようとしても、非難の言葉が曖昧で内容もたわいないことであるが故に、分かってもらえないことがほとんどだそうです。

被害者の支配が完了すると、加害者は次に、被害者の心を破壊しにかかります。中傷、悪口、侮辱が繰り返され、被害者が自由を取り戻そうとすれば、加害者の心に憎しみがわきおこります(支配があやうくなるから)。被害者が行動を起こせば「攻撃的な人間だ」と攻撃され、行動を起こさなければ加害者の精神的な暴力を甘んじて受けることになり、逃げ道を失ってしまいます。その結果は心身の不調であったり、最悪の場合自殺であったりします。

他人を貶めるのが生きがいの加害者が被害者の言葉に耳を傾けることはなく、被害者が状況を改善するのも残念ながら不可能です。加害者が支配してきそうになってきたらその時点で行動を起こし証拠を集めたり助けてくれる人を確保したりするのが理想的ですが、いったん加害者の罠にはまってしまったら、あとは法律の力を借りてでも離婚するなり会社を辞めるなりするしかなさそうです。本書を通じて「こうすれば大丈夫!」という予防法や解決法が存在しないのがモラル・ハラスメントのおそろしいところだと感じました。

本書に紹介される事例一つ一つが、言葉は悪いのですが胸クソ悪すぎて、一冊読み終えるのにかなり時間を費やしてしまいました。でも、そういった事例が豊富に収録されているため、「もしかして」と心のあたりのある方々には役に立つ一冊かもしれません。一人でも多くの人が加害者の特徴と手口を理解し、辛い毎日を送る人が一人でも減るようにと願ってやみません。

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カテゴリ: 【1】 人間関係 

テーマ: 心理学いろいろ - ジャンル: 心と身体

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Posted on 2017/02/02 Thu. 10:43    TB: --    CM: --

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