【自分メモ】

フリーランス翻訳者の読書メモ

04« 1.2.3.4.5.6.7.8.9.10.11.12.13.14.15.16.17.18.19.20.21.22.23.24.25.26.27.28.29.30.31.»06

『日本人の死に時―そんなに長生きしたいですか』 



久坂部羊 著の『日本人の死に時―そんなに長生きしたいですか』を読みました。


世の中には、特に規則があるわけでもないのに「正しい」もしくは「好ましい」とされていることって多いですよね。若いこと、かわいいこと、勉強が得意なこと、スポーツが得意なこと、長生きであること、などなど。

日本では「若さ」と「長生き」に対する人々の欲望と執着がきわめて強く(とは言っても日本に限ったことでもないと思いますが)、ずっと若々しくずっと元気でいるためにお金や労力を惜しまない風潮にありますね。化粧品もアンチエイジング効果をセールスポイントに据えたものが多いように思うし、育毛剤や白髪染めも多くの人が使っているし、サプリも多く売れていますよね。

そしてもちろん、身体を健康に長く維持するための医療もずいぶん発達しました。老若男女具合が悪いと感じれば病院で治療を受け、元気になって日常生活へと戻ります。特に高齢になれば、具合が悪くなる箇所も頻度も自然に増えていって通院も多くなりますが、それでも一昔前だったら命を落としてしまいかねなかった病気であっても、今では治療できちんと良くなることが増えたのではないでしょうか。そうして私たち国民の寿命はぐんぐんと伸び、日本は今や世界屈指の長寿国となりました。

医療が多くの人の健康そして命を守るのは素晴らしいことだと思います。しかしながら著者の言葉を借りれば、現代日本は「医療が発展したせいで、患者は自然な形で死ねず、無理やりいかされるよう」な時代になってしまっているそうです。それは、多くの人が「ピンピンコロリ」を目指して「ピンピン」に多くのリソースをつぎ込む傍ら、「コロリ」については誰もがなぜか「自然にそうなる」と甘い見通しを立ててしまい、その結果ピンピン健康でいた分だけ「最後はだらだらと死に向かって」しまう時代であり、寝たきりになったり痛みに襲われたり辛い治療を受けながら、先に亡くなっていく周囲の高齢者をうらやましく思ってしまう時代であり、「早死にの危険は減ったけれど、長生きの危険が高まっている」時代、なのだそうです。幸せにそして穏やかに最期を迎える高齢者の方ももちろん多くいらっしゃると思いますが、本書には医者である著者が遭遇した、苦しくてもなかなか死ねない高齢者の辛く悲しいエピソードが数多く収録されています。

著者は、医療従事者に対して「無駄な延命治療から死を支える医療に転換するべき」と提言するとともに、一般読者に対しては「長生きを望むのなら、その後どう死ぬのかまでイメージしておく」ことと「自分の死に時を想定し、そこまではしっかり生き、その後は余生とする」ことを提案しています。誰だって自分がなったことのない状態を想像するのは難しく、高齢者になった自分をイメージするのももちろん難しいですよね。私もまったくイメージできません。でも、健康寿命と平均寿命の差が6~7年もあるこの時代ですから、考えようと心にとめておくだけでも後に違いを生むのかもしれません。

私たちは、どこまで長生きすれば満足できるのか。
自分の死に時をいつ頃に想定するか。
死に時までどんな人生を送りたいか。

自分の人生のことですから、時間を見つけてしっかり一度考えてみたいと思います。

全編を通じて、楽しいことも嬉しいことも明るい気分になることも残念ながら書いてありませんが(著者も最初にそう断りを入れるほど・笑)、人生について多くを考える機会を与えてくれた一冊でした。
関連記事

カテゴリ: 【6】 読書あれこれ

テーマ: モノの見方、考え方。 - ジャンル: 心と身体

[edit]

Posted on 2016/01/22 Fri. 10:00    TB: --    CM: --

Greetings!

Categories

Recent entries

Archive

Now on Instagram

Twitter

My bookshelf

Recommended books for you

Search in this blog

Send mail